まだロックが好き

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おめおめと生きている日記

ポテチの袋が開かなくて

 

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智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。文豪夏目漱石は言った。言ったというか書いた。まったくそのとおりだ。私は今回、とくに「意地を通せば窮屈だ」のところに深い感銘を受けた。とんでもない意地っ張りに遭遇した。ポテチである。ポテチの袋が開かないのである。通常ポテチには開け方が2パターンある。「子供開け」と「大人開け」である。まず「子供開け」というのは、ポテチ袋の製造工程で出来上がると思しき袋の天面と底面にあるギザギザを裂く開け方である。では「大人開け」はなんなのか。それはもちろん製造工程で出来上がると思しきポテチの袋の背面にある背びれをつまみ引き、そのさいポテチ袋の腹部をも同時につまみ引くことにより、天面、若しくは底面に糊付けされたギザギザ部分を分割し、間口を水平にオープンすることができる。ちなみにこれを何故「子供」と「大人」で分別するか、というと開封にさいするスキルの必要性をもってしてそう名づける。「大人開け」というのは開封時、袋をひっぱる膂力、その右腕左腕の力のバランス、開口時に瞬発的に発動させなければ中身が噴出してしまうのを防止する均衡能力、などなどのさまざまな人生訓を利用するため、これは大人ではなければできない。ゆえに「大人開け」と呼ばれている。たいして「子供開け」とは、そんなスキルを必要としない。ただそのギザギザを引くだけでポテチを食らうことが出来る。そんなことを書けば「なんだ子供開けのほうが利に敵っているじゃん」と文明の利便性に犯された現代人は言うかもしれない。甘い。このネーミングにはもうひとつ理由があり、それは保存に関することである。「大人開け」の場合は保存がしやすい。それは開け口から袋を畳んでゴム製の輪や洗濯ばさみで封印することにより、いくばくかの空気感染を防ぐことが可能なのである。ゆえにポテチを矢庭にすべて食えない、というか現代のしがらみ、それは滞留する脂肪などを考慮して食わない大人はやはり大人開けをするのである。対する「子供開け」は保存に不向きである。間口がふにゃふにゃ、かつポテチの袋の形状をおもんぱかるとそれはより長方形型になってしまい、ゴム製の輪や洗濯ばさみを利用しても外気、それはポテチに対する梅毒のようなものでポテチを犯すもの、の進入を許してしまう。しかし子供はポテチを開封したら最後、一気呵成として食すので保存の必要性は皆無である。だからこれは「子供開け」、別名「馬鹿開け」などと呼ばれることもある。ちなみに「大人開け」。このオープン方法であると、パーティ開けに展開することができる。先ほど引き上げた背びれ部分を裂断していくことにより、ポテチ袋がそのまま簡易的な皿として機能する。それがため間口が一方向しかない「大人開け」とちがい、東西南北からポテチを取ることができる。だから大勢でポテチをつつく場合、この開け方はとても便利で、ゆえにパーティ開けと呼ばれている。私は大人だ。30歳だ。だからもちろん「大人開け」をしようとした。それが開かないのである。私はけっこう体躯が良く、膂力も人並み以上にあるはずである。なのに。それなのにポテチの袋が開かないのである。初手は天面より開封しようとした。天面とは、ポテチのパッケージを矯めつ眇めつしてみると文字や戯画が記されており、それが読みやすい方面、その上部を天面とする。しかしどうしても開かない。しかし私も奸智に長ける三十路の男。こういうときは底面からチャレンジするのだ。と思い、そうした。しかし開かない。強情なやつめ…。と私は思った。季節は夏。空気調整具で室内は適温に保っているが、手に滲んでくる汗は誤魔化せない。ゆえにぬるぬる滑るのである。しかも度重なる袋との格闘。袋はより一層くにゃくにゃ。へたっていく。こうして私を更にいらだたせる。ふざけた野郎だ、と思った。そこでしかし本当にポテチは野郎なのか?という猜疑心が芽生えた。もしポテチが女型だとしたら、これは悩ましくもいじらしい行為ではないか。焦らして急かして、そうして食わせる。劣情を煽ってくる。なんて蠱惑的な悪魔なんだ!と懊悩した私の目に裁断機、通称はさみが飛び込んできた。これをつかっちゃうぞ…。ふふふ、お試しになすって…。なんちゅう譫妄状態。これではいけない。しかもポテチは徒手空拳。そんな相手に私は武器をつかうのか。卑怯じゃないのか。だめじゃないのか。相手は婦女である。俺は男としてどうなんだ!そんなことを思いを悔悟。切歯扼腕。おのれのふがいなさに慟哭した。だからもう一度、ちゃんとポテチの袋に向き合おう。赤裸になって立ち向かおう。そうおもった。そんなポテチと私、ほんとうはどちらが意地っ張りなのか。そのへんだよね、けっきょく。って書きながら意地を通して改行をなくしてみた。文字がぎゅうぎゅうで窮屈だ。きっつー。