まだロックが好き

まだロックが好き

おめおめと生きている日記

Gary Clark Jr.というヒップホップ、ソウル、ファンク、R&Bをロックにキャッチーに邂逅させたブルーズギタリスト

 

 ニルバーナ、ちゅうかフーファイターズのデイブグロールと、イーグルスのジョーウォルシュが、ビートルズの、ってゆうかジョージの「ホワイル・マイギター・ジェントリーウィープス」を演奏している動画がユーチューブにあった。そこでいっしょに演奏していたひとがゲイリークラークジュニアという黒人のブルーズマンで、これがくっそかっこよかった。

 公式動画ではないけれども。

The Beatles A Grammy Salute While My Guitar Gently Weeps - YouTube

 

 一音の説得力というものがあるとおもっている。仏師は「木を彫って仏のかたちにする、のではなく、木の中におわす神のかたちに彫りすすめるだけだ」と云う。そんな感じで音楽にも曲のなかに眠っているフレーズ、音というものがあって、演奏者というのはそれを見つけるのに彫心鏤骨するわけですね。

 

 そんな必要な音を、ベンドいっぱつで弾きあてることができる。これが黒人のタイム感というか、偉大なるギタリストであって、技術的にはなんてこともないのだけれども、絶対にまねすることのできない「なにか」がある。そのへんはやっぱB.Bキングが最強だとおもう。

 

 とにかくゲイリークラークジュニア、この人のギターにはその説得力が顕著だとおもう。その道で苔の生したジョーウォルシュがフレーズを弾きまくるのよりも、チョーキング一発で存在感を顕在化させてしまう。余談だが、デイブグロールのドラムうるさすぎ。白人のドラムはヨコがねぇだよ。*1TPOをかんがえて欲しい。

 

 かれが日の目を浴びたのは2010年のクラプトンのクロスロードフェスティバルらしい。このときの「Bright Lights」という曲がすごすぎて言葉にならない。これカジノのフロントの音なのかよ。

Gary Clark Jr. - Bright Lights - YouTube

 

 カジノにファズを足している。FulltoneのOctafuzz OF-2をつかっているようで、ノイズリダクションなどは使用していないように思う。シングルコイルはノイズを操ってこそだとおもうが、このカジノというハウリングしやすいフルアコのギターにファズだなんて火牛の計というかなんというか。しかし、P90のふくよかなトーンはそのままに過入力電磁を帯びたそのトーンはサスティナブルで、そのうえフィードバックをたくみに操っている。この音がとても気持ちよい。

 

Gary Clark Jr. - Grinder (Official Music Video) - YouTube

 この「Grinder」という曲はそれがわかりやすいかな、とおもう。公式動画で映像ではSGを使用しているが、どうも音的にはカジノっぽいような気がする。最初のノイズなんてのは箱物特有のノイズだし、このピッキングニュアンスはハムキャンセリングでは出ないとおもう。

 

 そいでアルバムも気になって聴いてみたのだが、これがまた雑駁といえば雑駁で、しかし、ブルーズギタリストしての堅い芯のようなものがある。なんといってもめちゃくちゃキャッチーなうえに、もういろんな音楽が入り混じっている。けっこうヒップホップ色も強い。上記の「Grinder」もそうだとおもうが、この曲が収録されている「The Story of Sonny Boy Slim」というアルバムがよかった。

 

The Story of Sonny Boy Slim

The Story of Sonny Boy Slim

 

 

 とにかく「黒い」アルバムだとおもう。一曲目「The Healing」からちょっとヒップホップ感があるし、六曲目の「Hold On」もどうように、プラスのソウル感がある。そうかと思えば三曲目の「Star」や七曲目の「Cold Blooded」はカッティングのノリが好いファンクだし、十曲目の「Can't Sleep」はそれらを邂逅させたオルタナテルブばロックソングだった。いっぽうで「Church」のようなやさしいデルタブルースっぽい曲もあれば、「Shake」のようなコテコテの教科書みたいな曲もある。

 

 でも、ファーストアルバムである「Blak and Blu」がいちばんはまったかもしれない。

Blak & Blu

Blak & Blu

 

 

 弩派手なホーンセクションからはじまる「Ain't Messin 'Round」なんてモダンなブルースとR&B感があり、そのポップな勢いもあって嵐のように過ぎていくのだけれど、その嵐の目の不動たるところにはブルーズとロックの揺るぎない氷心があるようにおもえる。つづくブルーズ曲、「When My Train Pulls In」はおなじアルバムかとうたぐってしまうほどの差があるが、ここにもその一片氷心がある。簡単なリフにはグルーヴ感がつきまとい、ワウをかませたファズギターはジミヘンそのものだとおもう。八曲目の「Numb」のような重苦しい歪みきったサウンドなんてのは、エレキギターが感情表現の道具であることを再度知らしめてくれているようだとおもう。そこから九曲目の「Please Come Home」のような落差のある曲にいくところに一枚のアルバムを聴くことの楽しみのようなものがあるのかもしれない。このアルバムめっちゃよい。

 

 長々と書いてしまったので、このへんで擱筆しようとおもう。さいきんはギターヒーローという言葉がなくなったように思うが、ゲイリークラークジュニアのように多彩な曲をもって、さまざまな音楽層にアプローチし、そのうえでブルーズのエッセンス、ギターという楽器のもつ魔力を発揮できるひとが出てきてくれたら好いなァとおもう。もっとたくさんギターの話しがしたいなァ、なんておもう。

*1:かつてビルブラッフォードがヨコのドラムが叩けずブルーズバンド、サヴォイブラウンを首になったがそれと同じだとおもう。ってゆうかリンゴスターはそのへんがすごい。後ろノリで、どんな曲にも対応できて、しかも後ろに詰め込んだようなリンゴっぽいフィルという個性もある。