まだロックが好き

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おめおめと生きている日記

スイカの忘れ物

 

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 Suicaが落ちていたのでひろいあげ、ためつすがめつしてみたものの、だれのものなのか判然としない。ゆえにビルヂングの防災センターに届けに参ったのだが、そこでつい困り果ててしまった。

 

 記入用紙に拾得物名を記載するところがある。どこをどう見てバナナやこけしやクランクシャフトには見えなかったので、実直素直に「スイカ」とかくぞ! と息巻いていたのだが、はたとその手がとまってしまった。

 

 つまり、「スイカ」とは「Suica」なのだけど、上記「スイカ」と書けばそれはもう「西瓜」である。ここで「スイカ」と記載すれば、おれは落ちていた西瓜を拾ったことになってしまう。そんなの狂人か泥棒である。

 

 冷静に考えてみよう。落ちている西瓜。それはきっとただのゴミ。食いカスの西瓜。みずみずしい赤い果肉はほとんど失われ、白い皮の部分にほんのり残っている程度である。そして緑と黒でしあがったダンダラ文様のストライプはきっと砂利にまみれ、ところどころ腐食している。かぴかぴの西瓜。

 

 おれはゴミをひろい、「ねぇ! これ落ちてたんだけど!」というひとなんですか? 狂人ですよ、そんなの。明日はきっと軍手の轢死体をもってくる。こまったものです。

 

 たとえばこれが完全体の西瓜、まんまるの西瓜だとしたら、それはきっと落ちていたのではなく、栽培されていた西瓜である。そんな西瓜をもってきてしまう、というのはそれってただの泥棒じゃん。清太さん…。

 

 つまり、おれはこの場で「スイカ」と記載するわけにはいかない。用紙だけを見た第三者が「スイカもってくるなんてへんなやつ」と思う。なによりおれは狂人か盗人になってしまう。だったら「Suica」とかけばいいじゃん、ってな話である。が、しかし。そうはいかぬのが人の世である。

 

 つまり「Suica」とかくことによって、ちょっとイキっているように思われるのではないか、という懸念が胸裏に浮かぶのである。

 

 もちろん上記西瓜問題を考慮すれば、しっかりとその物品名「Suica」と書くべきであろう。ただ、日常会話において「夏はちょっとHawaiiへVacancesに…」などと外来語を綯い交ぜにした言語は発するひとがいたならば「うざいなコイツ」とおもうでしょう。

 

 そういうことである。日本語のフォーマットで仕上がった記載用紙に、だしぬけに蟹行文字をしようすることは、自身を「うざいイキってるやつだ」、と思わせてしまう可能性の極めてたかい、たいへん剣呑な業なのである。

 

 ゆえに、記載用紙のまえでまごまごとしていたところ、窓口の仁が「ICカードと書いてください」と云って呉れた。ははは、ICカードね。つって最後に「氏名と連絡先も書いてください」なんつって誰何(すいか)されましたとさ。