まだロックが好き

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おめおめと生きている日記

ヘルプマークにヘルプ

 

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画像引用元:ヘルプマーク 東京都福祉保健局

 

 あ~ら、すてきなステッキ。つうか、おっ! これ知ってるやつやん! てヘルプマークなる定紋。ツイッターで見たヤツだ! あ、すわってください… つって席を空けたのさ。帰りの電車で、おれは。

 

 だからなんだ。という話しだし、きみはそんなことばかり考えていてどうなの? ちょっと慙愧に耐えないの? みたいなことであるけれど、まぁ悄然したというか、慄然としたというか、周章狼狽っての? そんなかんじになったのは「ありがとう」の一言もなかったからである。

 

 オッケーオッケー。わかったよ。だいじょうぶ。いや、べつにさ、感謝されたいからやっているわけではないのよ、もちろん。道徳的に、というのはなんだか広義であやふやだけれども、矩を踰えぬように、ちゅうか。人道をはずれぬように、とおもい、いや、妻が妊娠しているときに席をゆずっていただきたかったし、情けは人のためならず的な発想というのかね? これは。まぁだから因果応報的に、未来の侮蔑をさけるために、おれは席を空けたんだな。けっきょくのところ。

 

 でもよぉ。ありがとうって、すてきな言葉じゃん。世界がありがとうで充溢すればきっとみんなハッピーだとおもうわけ。矢沢はそうおもうわけ。だから言おうよ。どんなときも。病める時も健やかなる時も。「ありがとう」って言おうよ。ね? これ夫婦えんまんの秘術。エビバデセイ。ありがとう。ほら。こころがぽかぽかしてくるでしょ? それがいわゆる仕合わせというものですよ。

 

 すさんだね。てゆうか木っ端微塵。やっぱ怒りは爆発だよ? て粉々。おれの心は。怒りのノルマンディー上陸作戦。しかもだ。その仁はこちらに向け、ちらり。嘲弄と侮蔑を宿した一瞥を食らわしやがったのである。あかん。このままじゃ憤死しかねねぇ。超カノッサ。つって、六根清浄、六根清浄。ただ一切は過ぎていくのみです。なんてぐあいに精神の安定を保とうとデパスを二十錠ほど飲み下したのさ。おれは。

 

 しばらくして落ち着きを取り戻し、なぜかかる不遇に見舞われたのか。もう二度としくじらないぞ。と今後のために頭脳の個人事務所で反省会をひらいた。そのヘルプマークをたずさえた仁が謝意もいえぬほどシャイだったのか。というクラシックな駄洒落をおもったが、そんな答えはふざけすぎている。世の中をなめるな、おれ。

 

 答えが出ぬまま、おれは暗黒のなかを走りぬける電車の車窓に眼を注いだ。そこに映っていた一匹の男の、なんたるみすぼらしいことか。答えはこれだった。

 

 すなわち、くたくたの弊衣たる背広を着用のうえ、憔悴しきった蒼白の顔、光のない絶望の眼窩、萌え始めた頤から鬢までの不精然とした髭、なんといっても頭のわるそうな顔をした風采。これだ。これだよ。つまり、おれのうだつのあがらない風体が原因だったのだよ。

 

 なーんだ。たんじゅんな答えだったじゃないか。はは。そりゃそうだ。こんな、いつ電車自殺をするかもしれぬ不審者に、声などかけたくあるものか。答えが判然としてよかったよかった。もうほんとマジすっごい釈然としないし、けっこう死にたい。だれかたすけてくれ。