まだロックが好き

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おめおめと生きている日記

THE 1975「ネット上の人間関係についての簡単な調査」

「人を好き嫌いで判断するな」とおっしゃるのはずいぶんと独善的な合理性だとおもう。人を好き嫌い以外で判断するほうがむずかしくないっすか?

 

 なのではっきり言っちゃうが、おれはヴィジュアル系が嫌いです。そういう言うと、たまにV系の道楽ものたちから「V系は音楽もすごい。ディルアングレイは世界で通用する日本のバンドだ。すなわち、お前は音楽の良し悪しがわかってねぇ」とか言われ人権を奪われる。すごい敵愾心である。

 

 しかし世界に通用する日本のアーティストというジャンルを見てみると、上記ディルアングレイ、ベイビーメタル、パフューム、初音ミクなど、音楽そのものよりもむしろショウビズ的「見た目」が骨子であるような気がしてしまう。音楽だけで言ったらMONOくらいじゃないのかしら。

 

 たしかにロックの歴史を省みてみると、その本質は音楽そのものとおんなじくらいの割合で、視覚的なエンターテインメントに分がある気がする。だから上記のような「見た目」的な演出をしているアーティストが世界で活躍するのは、とても「ロック的」であるとおもう。

 

 だから「見た目」は超だいじです。でもおれはイケメンが嫌いです。アイドル的バンドが嫌いです。でもTOKIOは好きです、人が。もっとこうサンボマスターとかTHE50回転ズみたくしていてくれよ、と思ってしまう。だからTHE 1975というバンドにもあまり良い印象はなかったのである。

 

 けれども2018年の暮れちかくに出した「ネット上の人間関係についての簡単な調査」という三枚目のアルバムがすさまじく良かった。好きです、とても。

 

 じっさい彼らがアイドル的存在なのかはよくわかっていない。そんなに1975の動息を追っていないからである。なんとなくマスメディアじみた売り方が気に入らなかったのだとおもう。じゃあなぜ聴いたのか? というと、サブスクの新譜にあったからである。

 

「ネット上の人間関係についての簡単な調査」は静かに圧縮された抒情的なポップだとおもう。打ち込んだデジタルな音色が水際立っているが、最新の技術で八十年代ふうのレトロな曲調を演じているところにすこぶるエスプリが効いている。この書き方。なにを言っているのかよくわからない音楽ライターふうです。気障である。

 

 作品を仕上げるときに「つくろう!」と気力をもってつくる場合と、「なんとなくできちゃった」という場合があるとおもう。本人たちにどのような企図があったのかは存じ上げないが、おれはこのアルバムに関しては後者であるような気がする。そこが好き。

 

 ファズめいたリフレインがポップな「Give Yourself A Try」。このリフが延々とリピートするのだけれど、ふと忽然と止む。そのあとまたリフが立ち上がるのだけれど、それを聴くとやはりアレンジとは引き算なのだなとおもう。勉強になります。

 

 アルバムが全体的に打ち込みなアレンジがおおく「TOOTIMETOOTIMETOOTIME」も同様なのだけれど、仰々しくないところが好き。静謐さがあるとおもう。めっちゃポップなのに森閑と叙情的。芸術的とはこういうのを名伏するのかもしれない。

 

 ポップが好きなおれでもくどくどしいのはちょっと年齢的にきつくなってきた。このアルバムが、いい歳こいてロックなんかを聴いている大人に受けるのは「How To Draw / Petrichor」や、しゃべりの録音「The Man Who Married A Robot / Love Theme」みたいな曲が要所に挟まれているからなのかもしれない。いわゆるバランス。そしてなによりアルバムという単位で聴きたくなる。

 

「Love It If We Made It」や「I Like America & America Likes Me」はボーカルが熱を帯びていてアッパー。なのにトラックが洒落てる。重々しくない。大袈裟ではない。すこぶる瀟洒。オーセンティックなブリティッシュアダルトが濛気している。

 

 叙情的なトラッドなアコースティック「Be My Mistake」、アコースティックで言えば、スリーフィンガーの「Surrounded By Heads And Bodies」もすごく好き。やわらかな陽射しがカーテンを揺らしているような雰囲気なのに、中途のモーダルインターチェンジ感がふいに心を曇らせる。

 

「Sincerity Is Scary」なんてのは色気がヤバイ。ふだんこういう曲をあまり聴かないけれども、アルバムに挟んでくるといいなとおもう。コーラスラインがとても黒い。R&B感。たいして「Mine」はジャジーなピアノが日常からぽろぽろとこぼれてくるかんじ。ラッパも洒落てる。エロくない大人のかんじ。日常映画のようなふわっとした色彩の曲。

 

「Inside Your Mind」のような壮大なバックグラウンドに溶け込んでいる歪んだギターを聴くと、汚らしいものだった筈のエレキギターディストーションは、いつのまにか美しさを表現するようになったのだろうとおもう。

 

 おれは「It’s Not Living (If It’s Not With You)」って曲大好き。アルバムの白眉である。だってめちゃダサい。レトロポップである。メロディが古くさい。完全に80年代。デュランデュランかよ。だけれどメロが強い。そしてなによりも愛らしい表情がある。懐古するということは、現代の視点があるということである。そんな回帰をモダンに圧縮したのという感じ。すごく好き。そういや「I Could’t Be More In Love」。これもメロディが古い。なのに洒落てる。垢抜けてる。

  

 掉尾を飾るのは「I Always Wanna Die (Sometimes)」という曲だけれど、もっともロックバンドじみているとおもう。好き。

 

 そんなことあるまい! と峻烈な批判をうけるかもしれないが、おれはくるりというバンドの「THE WORLD IS MINE」というアルバムを思い出した。デジタルなのに寂寞としているふうなところが、おれのなかで吻合したのかもしれない。きっと何度も聴くアルバムになるとおもう。

 

ネット上の人間関係についての簡単な調査

ネット上の人間関係についての簡単な調査

  • アーティスト: THE 1975,マシュー・ヒーリー,ジョージ・ダニエル,ロス・マクドナルド,アダム・ハン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2018/11/30
  • メディア: CD
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